転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


179 解体祭り、つ〜



「まったく。お前ら、いくらなんでもちょっと常識がなさ過ぎるぞ」

「えぇ〜でも、ルディーンがクラウンコッコを狩ってくれなかったら、お父さんや村の人たちが危ない思いして狩らないといけなかったんだよ」

 お父さんとレーア姉ちゃんが話してるその横には、昨日森で取ってきたクラウンコッコの山。

 今日は昨日獲ってきたクラウンコッコを、早速みんなで解体する事になったんだ。

 あっ、こう言うと前にお兄ちゃんたちと一緒にウサギを狩って来た時と同じみたいに聞こえるよね? けど今回はレーア姉ちゃんのお友達の家族や、近所の人たちと一緒なんだよね。

 だって今回は前回以上に数が多いから、みんなでやら無いと絶対今日中に終わらないもん。

 だから今日は、村の広場を使わせてもらって解体作業をしてるんだ。 

「まぁいい。で、解体するわけだが……ルディーン」

「何? お父さん」

「この間のウサギは内臓も食用に回したよな? もしかしてクラウンコッコの内臓も食べられるのか?」

 お父さんにこう聞かれたけど……う〜ん、どうだろう? クラウンコッコは鶏の魔物だから多分内臓も美味しいと思うんだけど、変異した時にどうなってるか解んないから一度鑑定解析で知れべてみ無いと絶対食べられるって言えないんだよね。

 だから僕はお父さんにそう言ったんだ。

「解った。じゃあとりあえず腹を開いてみるぞ」

 そしたらお父さんは近くにおいてあった重さ軽減の魔道具が付けられてるクラウンコッコの1匹を解体用の台の上に乗せて、それから大きなナイフでお腹を開いた。

 でね、お腹の中から慎重に内臓をかき出すと、その内臓だけを地面に敷いてあったなめし皮のシートの上に移したんだよね。

「ほら、ルディーン。これで大丈夫だろ?」

「うん! じゃあ調べてみるね」

 と言う訳で僕は、お父さんが並べてくれた内臓のいろんな部位を、一箇所ずつ鑑定解析で調べていったんだ。

 そしたら僕が思ってた以上に、クラウンコッコの内臓は宝の山だったんだ。

「お父さん。これ、殆どが美味しいって出てるよ。特にここなんて、生でも食べられる位だってさ」

 やっつけてすぐにお腹から出した訳じゃないからちょっとは悪くなってるかなぁ? って思ってたんだけど、魔物の内臓は魔力で守られてるからなのか一日くらいじゃなんともなってなかったみたいなんだ。

 おかげで肝臓なんかはそのままお塩を振っただけで食べられるって出てるんだよね。

「いやいや、流石に生で食べたらダメだろ」

 でもお父さんは生では食べられないって言うんだ。

 鑑定解析では食べられるって出てるんだけどなぁ。

 でもお肉を生で食べたことなんて僕も無いから、お父さんがそう言うのも解る気がするけどね。


 クラウンコッコって凄いなぁ。

 その後もいろんな所を鑑定解析で調べたんだけど、殆ど全部食べられるみたいなんだ。

 食べられないって出たのはくちばしとか硬い骨、後はむしった羽くらいなんだよね。

 何と足やトサカまで食べられるって言うんだもん。ホントびっくりしたよ。

 それに食べられないって出た所だって骨はスープになるし、尾羽やくちばしは矢の材料になるから殆ど捨てる所が無いんだ。

 今までもいろんな魔物を鑑定解析で調べてきたけど、こんなのは流石に初めてなんだよね。

 でね、その結果を話したらみんなびっくり。

「なに? クラウンコッコってそんなに食べられるところが多かったのか!?」

 お父さんやお母さんに聞いてみたら、何と胸周りやモモのお肉以外は殆ど捨ててたって言うもんだから今度は僕がびっくりしちゃったんだ。

「羽根のとことか、食べなかったの?」

「ん? 普通、鳥の羽なんて食べないだろ」

 流石に付け根のお肉は食べてたらしいんだけど、そこから先は全部捨ててたって言うんだもん。ホント、もったいないよね。

「何言ってるんだよ! 羽根の先っぽや真ん中あたりのお肉は鳥揚げにすると美味しいんだよ」

「何っ! そうなのか?」

 お父さんはびっくりしてるけど、そこは手羽先とか手羽中って言って僕の前世で住んでた場所の名物料理に使われてたみたいなんだ。

 それにね、他にもおいしい場所はいっぱいあるんだよ。

「あとね、お父さんたちが今まで捨ててた中には、鑑定解析で調べたらさっき食べてるって言ってたのより美味しいって出てきたとこもあるんだからね」

 いつもは狩る時に首を切り落とすからって、そこのお肉は今まで食べて無かった言うんだ。

 でも、鑑定解析で調べたらそこは特によく動くところだから、身がしまっててとっても美味しいって出てるんだよね

 その他にもなんこつって言う柔らかい骨とか、尻尾の付け根のお肉とかも美味しいって出てるのに、そこをみんな捨ててたって言うんだもん。

 本当にもったいないなぁ。

「う〜ん、まさかそんなに色々なおいしい部位があったとは……はっ、いかん!」

 お父さんは僕の話を聞いてびっくりしてたんだけど、急に何かを思い出したみたいで慌てだしたんだ。

 だからどうしたの? って聞いたら、

「ルディーンが言った事、早くみんなに伝えないと! 内臓に関してはルディーンに聞いてからじゃないと捨ててはダメだって言ってあるけど、いつも捨ててる首とか羽、それに尻尾の所の肉なんかは、このままだと解体した端から全部穴に捨てられちまうぞ!」

 なんて答えが帰って来たんだ。

 そう言えばそっか。

 今日はみんなで解体作業をしてるけど、クラウンコッコは体が大きいからみんなはなれた場所に解体用の台を置いて作業してるんだよね。

 だから当然、僕たちが話してる内容なんて知ってるはずが無いんだ。

「今日の解体作業が終わったらルディーン、お前の提案でクラウンコッコの鳥揚げを作るって話になってるだろ。なのに、このままだと揚げたら美味いって言う羽根の所が全部捨てられちまう。何せあそこは解体するのに邪魔だからって真っ先に切り離される場所だからな」

 こりゃ大変だって事で、僕は近くにいるお兄ちゃんやお姉ちゃんたち、それにお母さんにも今の話をして、大急ぎでみんなのところに説明しに行ってもらったんだ。

 そのおかげで、なんとか食べられるところを無駄に捨てられるなんてことにはならなかったんだけど……。

「ルディーン君、ここはどうやって切り分ければいいの?」

「ねぇ、ここも食べられるのよね? だけどこのままだととっても硬そうなんだけど、どうすればいいの?」

 首周りのお肉は胸とかモモに近いからいいけど、尻尾のとことか羽根のとこなんかは食べる所が少なかったりゼラチン質で普通のお肉とちょっと違ったりしてるし、なんこつなんてそもそもどう食べればいいのかまったく想像もつかないからみんな困って僕のところに聞きに来るんだよね。

 だからホントはお母さんたちが解体したクラウンコッコのお料理を作ってる間に昨日獲ってきた卵を使ってそのお料理につけるマヨネーズを作るつもりだったんだけど、それに追われて今日は断念。

 お料理が出来上がるまでずっと近所のおばさんたちの質問攻めにあってたもんだから、僕はぐったりしてあんなに楽しみだった鳥揚げをあんまり食べることができなかったんだ。

 でも、そのおかげで前世で見てたオヒルナンデスヨでやってた鶏のお料理を思い出したし、今度色々作ってみようかなぁ。

 折角いろんな部位があるんだもん。マヨネーズを作るのならそれを使った美味しいお料理が一緒にあったほうがいいもんね。


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